Z4はいうまでもなくオープンカーだ。だから乗るなら晴れがいい。
僕のZ4は6連装CDプレイヤーをわざわざ外し、iPodインターフェイスを使って車載オーディオシステムに直結させているが、晴れている日には、あえてFMラジオを鳴らしてみるのがまた愉しい。
僕はバイク乗りでもあるから、幌を全開に乗るのが気分だ。寒くても暑くてもこれがいい。従って雨よりも晴れている日が、オープンカーは楽しいのはいうまでもない。
しかし、実は雨の日のZ4は、かなり愉しい乗り物だ。
ひとつには、ソフトトップの幌に当たる雨音を聞きながら乗るのは、意外に心地よい。メタルトップの屋根に当たる雨音よりも、布製であるソフトトップの柔らかな当たりに緩衝された雨の音は、そこそこに穏やかで優しいのだ。このときは、ラジオよりもiPodからお気に入りの音楽を低く流すのが、とても合う。だから雨もまた愉し、なのである。
雨の日のZ4が愉しいもう一つの理由は、そのデザインにある。
アメリカ人でありながらドイツ企業であるBMWのデザイン部門トップに君臨するクリス・バングルの最高傑作が、このZ4と言っていい。低く身構えるようなボディ全体に大きくエッジが利かされ、くびれているというよりはえぐれたようなデザインが施されているZ4は、まるで巨大な鮫にみえる。僕のZ4はアルピンホワイトだから、まさに路上のホワイトシャーク(ホオジロザメ)のようである。
鮫であるから、というわけでもないが、雨に打たれながら水しぶきを上げつつ流すのはとても似合う。晴れた日にその美しくも奇異な姿を晒すのも反社会的というかアバンギャルドでいいのだが、雨の夜、ネオンを映しながらのたたずまいは本当に美しいのだ。優しく響く雨音に、ときどきコクピットに飛び込んでくる乾いたエンジン音が心を躍らせる。そして、乗っているときには自分には決して見えないはずの、雨を弾きながら疾走する美しい車体を想うことは、最上の愉悦になるのだ。
クルマは、いや、ありとあらゆるツールに共通することだが、機能に裏打ちされたデザインはいつでも僕たちのモチベーションを高めてくれる。どうせなら、美しく心を震わせてくれるデザインに浸らせてほしいと、誰もが願うと思うはずなのである。
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